工藤庸子, 放送大学教授,
eternel imparfait

外国語学習と異文化理解―HPを立ち上げました

2007年 6月 1日

本日は放送大学の「外国語」担当教員としてのお披露目です。「外国語」であって「フランス語」と言わないのはなぜか。○○語の履修者が増えた減ったと一喜一憂している場合ではない!からです。日本の高等教育が、これほど異文化に対して閉ざされてしまってよいのかという義憤のようなものが、出発点にある。アメリカを知ればよい、実践英語以外は必要ないというコスト削減の圧力が、どれほど強力に、全ての教育機関に浸透しているか。深刻な危機感をいだいている現場の教員たちは、少なくないはずです。

今、何が可能かを考えました。新鮮な世界観に支えられたDVDやIT教材を開発し、「初歩の○○語」の面接授業を積極的に展開してゆきます。これが出来るだけでも放送大学は恵まれているのですから。英語は得意という人たちも、かつて英語で挫折した人たちも、新しい外国語のとば口に立ってみてください。若々しい学問を背景とした教材を通して、異文化の魅力と尊厳に正面から向き合うことは素晴らしい経験であるはずです。

さまざまの偶然からインドネシア語の教材がまっ先に立ち上がりました。制作に当たった増原綾子さん、蓮池隆弘さんは、国際関係論の若手研究者、面接授業の担当講師でもあります。考えてみると、わたしが新米教師だったころから、ちょうど一世代分の「歴史の時間」が流れたことになる。世界が様変わりするのは当然。この教材制作は、わたしにとっても新たな刺戟になりました。

たとえばの話。こんな場面を想像してみましょう。地域の住民として、あるいは職場の人間関係で、あるいはボランティアの活動で、インドネシア出身の方と出会ったとしましょう。あなたは、インドネシアの首都がどのような町であり、国内にどのような宗教がどのような形で根づいているか、観光地バリ島以外に、どのような民族文化が息づいているかを知っている。そして、いくつかの言い回しでコミュニケーションが出来るのです。カタコトの日本語に対してカタコトのインドネシア語を返すことによって、どれほど温かい人間関係が生まれることか。

ここで考えているのは、外国籍の人々を受け入れる「ホスト社会」の初歩的なマナーです。こうした事柄について、日本の企業や地域社会はあまりにも無自覚です。総務省の掲げる「多文化共生社会」という標語も、一般にどのていど認知されているのでしょう。

わたし自身は、カリブ海からアフリカまでの「フランス語圏」の歴史、現代フランスの移民問題などを通して「異文化理解」という主題を視野に入れるようになりました。外国語教育の現場で応用できそうです。

それにしても、研究者としての発見や大学教員としての構想を、わたしたちが語りかけたいと願う市民社会の聴き手にまで、本気で届かせたいと思うなら、Web空間で独り言を言っているだけではダメですね。というわけで、放送大学の同僚である岩永雅也さん(専門は教育社会学)と共著で新書を書いてしまいました。タイトルは『大人のための「学問のススメ」』。6月刊行です。次回は、この出版企画についてお話させていただきます。

そうそう、出来たての初修外国語のHPを見てください。コンテンツは自習用、面接授業用に開発された教材の一部です。これまでに制作したDVDなども順次アップしてゆきます。
http://www.campus.u-air.ac.jp/~gaikokugo/webGaikokugo/

最後に。「多文化共生」という主題をめぐる行政の公式見解を知っておくことは大切です。総務省HPの報告書をご覧ください。
http://www.soumu.go.jp/kokusai/pdf/sonota_b5.pdf

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